インスペクション(建物状況調査)とは
インスペクション(建物状況調査)とは、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための調査です。
インスペクションを実施することで、安心して住宅を購入できる、メンテナンス・リフォームの見通しが立てやすい、といったメリットがあると言われています。
平成30年4月1日の宅建業法改正により、不動産業者はインスペクションの制度の説明が義務化されました。
しかし、実際にインスペクションを実施する事例は少ないのが現状です。
そこで本記事では、インスペクションが広がらない理由と、インスペクションは必要かという点について解説します。
是非最後までご覧ください。
インスペクションが広がらない理由①:不動産仲介業者が勧めない
不具合が見つかると契約を取れない
不動産仲介業者がインスペクションを勧めない大きい理由は、インスペクションを実施した場合、見つかった不具合の内容により、買主がその物件を購入しない可能性があるという点です。
インスペクションを実施すると、少なからず不具合の項目が見つかる可能性があります。その結果、購入を見送られる可能性を考えると、不動産仲介業者としては極力、インスペクションを実施しないように誘導することになります。
不具合が見つかったら、売れなくなるから嫌だな…
調査している間に売れてしまう
購入希望者から調査の希望があった場合、調査の日程調整で2~3週間、調査後に結果をまとめる期間で1週間程度かかるとすると、調査結果を手にするまで3~4週間の期間がかかります。
その間に他の購入希望者に購入される可能性も多くあります。
良い物件はスピード勝負ですので、購入希望者がインスペクションを実施している余裕はないというのが実情です。
調査している間に、物件が売れてしまうかもしれませんよ!
不動産仲介業者の手間がかかる
インスペクションを実施する場合、インスペクションを実施する業者の選定、売主との日程調整、調査の立会、購入希望者への結果の通知など、不動産仲介業者は多くの手間がかかります。
不動産仲介業者にとっては、単純にめんどくさいという気持ちになります。
正直、めんどくさいな… 給料が増えるわけでもないし( 一一)
インスペクションが広がらない理由②:資格が信用できない
インスペクションを行うためには資格が必要ですが、この資格は国家資格ではなく、決して難しい資格ではありません。
複数の団体が、資格を付与しており、建築士でない場合もあります。
筆者は、建物を設計する資格のない人間が、インスペクションを行うのは無理であると考えています。
インスペクションという考え方には筆者は賛成ですが、資格の要件が甘すぎるところが問題でしょう。
資格は、1日研修を受けるだけで取れるの!?
インスペクションが広がらない理由③:瑕疵があった場合の責任がない
インスペクションは、住宅のかかりつけの医者だという表現をされることがありますが、医者との大きな違いがあります。
それは、インスペクションを行った人は、その住宅に瑕疵がないことの責任を取るわけではないということです。
医者ならレントゲンで病気を見落としていたら責任問題となりますが、インスペクションはそのようなことはありません。
インスペクションの説明にも、「建物状況調査(インスペクション)は、瑕疵の有無を判定するものではなく、瑕疵がないことを保証するものではありません」と記載されています。
しかし一方で、インスペクションをどれだけ詳細に実施しても、完全に住宅の状況を把握することができないのも事実です。
現状、インスペクションは、気休め程度のものとなっています。
「ここが悪いと思うよ。知らんけど。」的な感じ…
売主によるインスペクションは不必要
インスペクションの結果が、買主は信用できない
先述の通り、インスペクションの結果は、信頼できない場合があります。
売主が事前に売主の費用でインスペクションを行い、その結果を買主に提示したとしても、買主がその結果を信用するかは買主次第です。
筆者なら売主が実施したインスペクションの結果は信用できません。
インスペクションの結果は買主に提示する必要がある
インスペクションを実施した場合、その結果は1年間買主に提示する必要があります。
もし仮にインスペクションで不具合が見つかった場合、不動産仲介業者はその不具合を隠すことはできません。
売主自身が結果を知りたいということでなければ、インスペクションをするのはおすすめしません。
買主によるインスペクションはやっても良い
買主によるインスペクションは有効
買主にとっては、何千万円もの買い物をするわけですので、買主の負担でインスペクションを行うのは有効な手段です。
ただし、責任は取ってもらえないので、結果は参考までにとどめておく方がよいでしょう。
不動産仲介業者への希望の伝え方
インスペクションを実施するには、調査までに2~3週間、結果をまとめるのに1週間程度の時間がかかります。
インスペクションを希望する旨を、最初の内覧申し込み時など、早めに不動産仲介業者に伝えるのが重要となります。
SUUMOに載っていた〇〇マンションを内覧したいです。
内覧して気に入ったら、購入前にインスペクションを希望します。
わかりました!
売主がインスペクションを拒否しても希望を伝える
インスペクションを実施するのには、売主の許可が必要となります。
売主は事前に不動産仲介業者に、許可するかどうかを回答していますが、仮に売主がインスペクションを拒否する意思を伝えていたとしても気にせず、希望する旨を伝えましょう。
不動産仲介業者は、インスペクションを拒否したことを理由に契約を取れないといった事態は避けます。
先述した通り、不動産仲介業者はインスペクションを嫌がりますので、売主にも事前に否定的な意見をいう場合もありますが、こちらの意思は必ず伝えましょう。
この家は、売主さんからインスペクションはNGとなっているんです
大きな買い物なので、是非ともインスペクションをしたいのですが、もう一度、売主さんに聞いてもらえませんか?
インスペクション業者は自分で探す
不動産仲介業者の紹介するインスペクション業者にお願いしてはいけません。
なぜなら不動産仲介業者とつながりのある業者の場合、インスペクションで不具合を報告すると、次回から不動産仲介業者に声を掛けてもらえなくなるからです。
インスペクションの資格を持つ人は多くいるため、極力不具合の報告を少なくする傾向が出ます。
インスペクション業者は、自分でインターネットなどで探しましょう。
インスペクションの業者はここがおすすめです!
インスペクションの業者さんは、こちらで探します!
結論:おすすめはしないがやっても良い
住宅は人生で一番大きい買い物です。
建物の状況をプロに調査してもらうのは、安心材料になるでしょう。
しかし、今のインスペクション(建物状況調査)では、制度的に不十分な点が多くあります。
筆者も、みなさんにインスペクションを手放しでおすすめできる状況にはありません。
中途半端な結論ですが、「時間と数万円の費用を追加で払えるのであれば、やっても良い」といったところです。
この記事が少しでも参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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