「建売住宅ってダサいよね~」
Youtube、TwitterなどのSNSを見ていると、建物ひいては設計者の悪口が見受けられます。しかも、それが設計業界の人の発言であることも珍しくありません。
筆者も建築学科出身で、様々な設計者が周りにいますので、様々な悪口をよく聞きます。
そこで、今回は、設計者へのよく聞く悪口の内容について解説し、さらに選んではいけない設計者についても持論をお話したいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
よく聞く設計者への悪口
建売住宅設計者への悪口
建売住宅ってダサいよね
「建売住宅ってダサいよね~」という発言は、非常によく聞きます。
かっこいい・ダサいというのは、完全な主観ですので、感じ方は人それぞれですので、その発言が合っている・間違っているというのは、言い切ることができません。
ただ、建売住宅は様々な種類があります。もちろんデザイン性が高いものもありますし、建売住宅というのは販売形式ですので、ひとくくりにしてデザインを評価すること自体がおかしな話です。
そして、間違いなく言えるのは、建売住宅は非常にコストを意識しているという点です。設計者は最も、コストパフォーマンスを高めようとして設計している点は、ハウスメーカーや注文住宅設計者との大きな違いで、これはかなりの能力を要します。
法律知らないよね
戸建て住宅は、関係する法令が非常に少なくて済みます。大規模な建物を設計している設計者からすると、不安になるほど制限がありません。もちろん、必要な資格も変わってきます。
その中でも、建売住宅の設計者は、同じような住宅を量産しますので、新たな法律に触れる機会が非常に少なくなります。
設計者どおしで話していても、他の設計者からは「建売住宅は楽で良いな~」と思われています。
ただ、建売住宅を建てる上で必要な知識を持っているのであれば、何の問題もありません。
ハウスメーカー設計者への悪口
ただの申請屋だよね
ハウスメーカーは、お客さんとのやり取りは営業担当が行うことが多く、間取りすら営業担当が描く場合もあります。
そこで、ハウスメーカーの設計者は何をするかというと、詳細の図面作成と各種申請手続きです。
オーダーメイドならではの、”どのように設計しよう”という核となる部分をしないため、ただの”申請屋”と呼ばれることもあります。
しかし、これは社内での役割分担がそのようになっているだけで、何も悪いことではありません。
設計者なら皆さんわかりますが、申請は大変です。
建築学科の出来損ない
少し話はそれますが、大学(大学院)の建築学科からの就職先で人気があるのは、アトリエ系の設計事務所であったり、組織設計事務所です。
一方で、人気がないのは、ハウスメーカーの設計部門です。
それは、ハウスメーカーの設計者は、上述したとおり”申請屋”になったり、そもそもハウスメーカーは規格が決まっているため、思うような設計ができなかったりするため、”設計がしたい!”という人からは人気がないのです。
もちろん、ハウスメーカーによっては、お客さんと共に設計者が設計を進めていく会社もあり、”設計がしたい!”という気持ちを持つことが正解な訳ではありませんので、気にする必要はありません。
そもそも、建築学科で優秀な人が社会に出ても優秀だとは全く言えません。
注文住宅設計者への悪口
設計下手だよね
注文住宅の間取りを見ると、一般的なセオリーから大きく外れている間取りも見受けられます。
これは、施主の希望から”変な間取り”になった結果であり、非効率的な部分も確かにあるでしょう。
しかし、そういった施主の希望を聞くことが、注文住宅のメリットですので、施主が納得しているのであれば何の問題もありません。
お金かけすぎ
注文住宅は費用が高いです。他の設計者からすると、「そんなにお金かけたら、そりゃ良い家作れるよ」と思われています。
これも施主が納得するかどうかで決まる注文住宅の手法によるものでしょう。
実際は、もっと安く仕上げる方法もあるわけですが、これぞ夢のマイホーム! お金をかけて良い家を作るのが注文住宅です。
「お金をかけすぎ」という悪口は、自分の設計する建物がお金をかけて設計ができない皮肉を言っているだけなのです。
マンション設計者への悪口
ようかんみたいな建物作って楽しい?
片廊下型のマンションは、食べ物の「ようかん」と表現されることもあり、四角い箱がならんでいる形となります。
この片廊下型のマンションは、何十年も形をほとんど変えずに採用されており、ほぼ最適解とも言える形状となっています。
そして、どのマンションでも形状が変わらず、その形を皮肉として、ようかんみたいな建物と言われることがあります。
しかし、不必要に形を変えることが、正しい設計だ言えません。合理的な形なのであれば、自信を持ってその形に設計すれば良いのです。
マンション以外は設計できないよね
理由はわかりませんが、大きな建築物を設計する設計者は、マンションとそれ以外に分類されます。
そして、お互いはあまりお互いの建物を設計したりはしません。
つまり、マンションの設計者は、ずっとマンションばかりを設計することになります。
マンションは他の施設と比べると、関係する法律は少なく、他の施設の設計を経験する機会も少ないため、いきなり他の施設を設計できるかというと、苦手であることは間違いありません。
ただ、それは全員そうです。初めてのものは戸惑います。
「マンション以外設計できない」というのは、他の施設の設計で苦労している設計者からのただの皮肉です。
結論:悪口は何も気にする必要はない
さて、様々な設計者の悪口を見てきたところで、では悪口を言われない設計者とは誰なのかを考えてみましょう。
それは、
- 見た目が良くてオリジナリティがあり
- 様々な建物に関連する法令を熟知し、かつ設計の経験があり
- 施主とのやりとりもすべて設計者が行い
- 施主の要望を聞きながら、セオリーから外れない合理的な建物を
- 費用を安く
を設計する設計者です。
お気づきのとおり、そんな設計者はいません。
設計者は、自分が必要とされている能力について、真摯に向き合えばそれで良いのです。
選んではいけない設計者とは
上記の悪口をご覧いただき、選んではいけない設計者がいます。それは、”他の設計者の悪口を言う設計者”です。
なぜなら、その設計者は、他の人の価値観を受け入れることのできない設計者だからです。
仮に、あなたが注文住宅を建てようとしていて、設計者との打ち合わせで、「〇〇しないと、建売住宅のように安っぽい仕上がりになりますよ」と言われたとします。
この場合の「建売住宅のように」という文言は完全に不必要な文言です。単純に「安っぽい仕上がりになりますよ」と言えばよいのです。
打ち合わせ段階では、注文住宅を選んだという価値観は一致しているので、当初の打ち合わせは問題なく進みますが、今後の打ち合わせで価値観の違いが生じた場合、他の人の価値観を受け入れることのできない設計者とはうまくいかない可能性が高くなります。
最後に
最後までご覧いただきありがとうございました。
今回は、よく聞く設計者への悪口と、選んではいけない設計者について、お話してきました。
設計界隈の内輪ネタではありますが、皆様が設計者を選ぶ上での一助になれば幸いです。
「今、設計をお願いしている設計者はこう言ってたけど、実際はどうなの?」、「そうは言っても、建売住宅の設計者より注文住宅の設計者の方が、設計が上手い気がする」といったご意見も、コメント欄より随時お待ちしております。
本日もありがとうございました!
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