工事の騒音・振動でお困りのかた
近隣で工事が始まると、騒音や振動が続きます
工事だから「言っても仕方ない」と思われるかもしれませんが、改善する方法があるかもしれません
苦情を言うのは、言いにくいものですし、工事業者って怖そうなイメージもあるかもしれませんが、素直に、「うるさい」「振動がする」「砂ぼこりがする」と状況を伝えてみましょう!
意外と状況が改善するかもしれません
この記事では、業界歴10年以上の一級建築士である筆者が、工事の苦情は誰に・どのように言うかをお伝えします
工事の騒音・振動の苦情は、まず施工者に言いましょう
工事の苦情はどこに言うべきか
工事の騒音・振動などの苦情は、まずは「施工者」に言いましょう
苦情を言う先としては、
- 施工者・・・〇〇建設・〇〇組・〇〇工務店など
- 施主 ・・・〇〇開発・〇〇ハウジング・〇〇不動産
- 役所 ・・・都道府県・市役所など
が選択肢としてあります
この中で、まずは「施工者」に苦情を伝えるのをおすすすめします。理由は以下のとおりです
工事の苦情は、まず施工者に言うのがおすすめな4つの理由
一番事情がわかっているから
施工者が一番事情をわかっています
現場で作業をしていると、「今日は音が大きいな・・・」と、施工者自身が感じている場合も多くあります
現場に苦情の連絡がくると、「やっぱりか・・・」と心の中で言っているかもしれません
施工者に連絡してみると、音の出る作業の工程や作業内容など、内部でしかわからない事情を説明してくれるでしょう
また、その場で回答はなくても、今後の作業の際には、注意してくれる場合もあります
対応のスピードが早いから
施主や役所に言うと、施主や役所から施工者に連絡が入り、状況を伝えることになります
単純にその分の時間がかかります。また、担当者が不在で連絡が滞ることもあります
施工者に直接言うのが、対応が一番早い方法です
状況を伝えやすいから
施主や役所に言うと、その内容を施工者に伝えることになりますが、施主や役所は現場にはいないため、イメージがついておらず、伝えた内容が間違って施工者に伝わることがあります
また、直接伝えることで、施工者からの質問にも答えることができ、こちらの状況を伝えやすくなります
場合によってはイレギュラー対応もしてもらえる
施工者によっては、こちらの事情に応じて、イレギュラー対応をしてくれる場合があります
例えば、
- 足場の養生シートを防音シートにしてくれた!
- 作業の時間帯を、こどもが昼寝する13~14時は静かにしてくれた!
- 我が家の、汚れた屋根を洗ってくれた!
といったものです
内容には、可能なもの、不可能なものがありますが、施工者との関係性を良好なものにできれば、こちらの要望を聞いてくれることもあるでしょう
ただし、無理強いはしてはいけません。それはただの不当要求です
工事の苦情を施工者に言っても改善しない場合の対応
残念ながら、工事の苦情を施工者に言っても、改善しない場合もあります
施工者の説明に納得できれば良いのですが、納得できないようであれば、施主に苦情を言いましょう
施主が大手のディベロッパーの場合などは、ブランドイメージにも影響しますので、丁寧に対応してくれるでしょう
施主に言う場合は、「施工者に伝えたが、対応してもらえない」ということを伝えましょう
作業時間等の法令違反が疑われる場合は、役所に言いましょう。これは後述します
施工方法で近隣への配慮の度合がわかる
騒音・振動がひどいと感じても、実際どれだけ施工者が近隣に対して、騒音・振動の配慮してくれているか、判断することは難しいですよね
ここでは、施工者が配慮してくれているか判断できるポイントをご紹介します
解体工事の場合は足場に防音パネル・防音シートが貼られているか
解体工事の場合、解体する建物まわりに足場を組み、防音パネルや防音シートを施工します
防音パネル・防音シートがないのは論外です
防音シートは、つけないのですか?
と聞いてみましょう
また、細かな点ですが、防音シートの大きさが横1:縦2が標準です。横1:縦3の防音シートは防音性能が低い「なんちゃって防音シート」です
ただし、建物四周のうち、解体する重機側の一面については、足場・防音パネルや防音シートを施工できません
なぜ、こちら側から解体するのですか?
と聞けば、答えてくれるでしょう。市街地など、解体できる方向が限定される場合もありますので、これは致し方ないこともあります
なお、解体工事が終わり、新築工事に移ると、防音シートではなく、養生シートという光を通すシートに変わります。この時に、
防音シートとできないのですか?
と聞かれると、「中が暗くなって、作業ができないので防音シートにはできません」と答えられますが、そこで、
光を通す防音シートあるますよね?
と質問すると、施工者は嫌がります(笑)。なぜなら、お金をかければできるからです
どうしても騒音が我慢できなければ言ってみましょう
解体工事の場合、散水を行っているか
解体工事の場合は、砂ぼこりが立ちます。それを防ぐためには、散水が重要となります
雑な現場は、散水が雑な場合があります
目安としては、重機1台につき、1本以上のホースで散水を行っているかを確認しましょう
砂ぼこりが激しく、散水がされていないようであれば、
もっと散水できないのですか?
と聞いてみましょう
騒音・振動計が設置されているか
騒音・振動がひどいと感じたら、騒音・振動計の有無を確認しましょう
騒音・振動は測定されていますか?
と聞けば、教えてくれるでしょう
騒音規制法第15条、振動規制法第15条に基づいて、各都道府県や自治体の条例で規制がされていますので、騒音・振動を計っていないとなると、施工者にとっては落ち度となります
騒音規制法と振動規制法では、著しい騒音を発生する作業や著しい振動を発生する作業を規制対象としており、具体的な数値はお住まいの自治体の基準をご確認ください
一般的には、住宅地であれば、著しい騒音を発生する作業や、著しい振動を発生する作業の作業時間は、
- 午後7時から翌日の午前7時までは作業禁止
- 日曜日、休日は作業禁止
また、騒音・振動の規制値は、
- 騒音の上限は85db(デシベル)
- 振動の上限は75db(デシベル)
となっています
ここで、注意が必要なのは、規制対象となるのは、著しい騒音を発生する作業や、著しい振動を発生する作業に限られるため、今感じている騒音・振動がその作業かどうか判断が難しい点です
こちらでは判断できないことがほとんどのため、うるさいと感じたら、以下に気を付けて苦情を言ってみましょう
工事の苦情を言うときに気を付けておくこと
工事ビラが手元にあれば用意しておく
工事ビラが配布されていて、手元にあるようであれば、手元に準備しておきましょう
工事ビラが手元にあると向こうに伝えると、作業日程や作業時間など約束を守らないといけないプレッシャーにもなります
作業時間を超えている場合は意外と多いです
ビラに書かれている作業時間を超えていませんか?
施工者の責任者に言う
工事現場には、様々な人がいます。元請、下請、作業員、ガードマン・・・
苦情を言うのは、必ず元請の責任者に言いましょう
元請(もとうけ)とは、工事の発注者から直接工事の施工を請け負った業者のことを言います
責任者は、「現場代理人」や「所長」と呼ばれることが多いです。大きい現場では、「副所長」や「工事長」など、トップ2の人に言ってもいいでしょう
少なくとも、元請の人に言いましょう
まず、直接苦情を言う場合は、現場の入口近くで、誰かに声を掛け、責任者の方を呼んでもらいます。ガードマンがいる場合は、ガードマンがいいでしょう
近隣に住んでいるものですが、責任者の方いらっしゃいますか?
と聞けばOKです
言葉遣いは丁寧に
大声で怒鳴っても、対応は変わりません
ただのクレーマー扱いをされ、むしろ、逆効果になることもあります
施工者も迷惑を掛けたいとは思っていません。丁寧に対応しましょう
(これは筆者からのお願いでもあります)
工事ではなく、計画の苦情を言わない
建物の計画に関する苦情(ここにマンションを建ててほしくない、等)は、完全に手遅れです
工事に着手している時点で、すべての必要な許認可はおりています。施工者に言っても、施主に言っても、役所に言っても、仕方ありません
どうしても計画の苦情を言いたい場合は、施主に言いましょう。施工者は図面通り建てるのが仕事なので、計画については一切お答えできません
大きな建物の場合は、事前に近隣協議がされますので、必ずその時に言いましょう
言える範囲で、こちらの事情を言う
工事の音が「うるさい」と伝えるだけでも良いのですが、言える範囲でこちらの事情も伝えてみましょう
例えば、
- 在宅勤務でリモート会議があるので、静かにしてほしい
- 音に敏感なこどもがいるので、静かにしてほしい
- 夜勤で昼間は寝ているため、静かにしてほしい
この場合、音の大きい作業の時間を調整するなどの提案をもらえる場合もあります。また、そうでなくても、施工者も事情をわかってもらえるので、親身に聞いてくれる可能性がます
連絡した内容をメモしておく
連絡した内容は、簡単で大丈夫ですので、メモを取っておきましょう。
いつ、だれに、どのような内容を伝えたかをメモしておくと、さらに揉めた場合や再度連絡する場合にも重要な資料となります。
最後に
最後まで、ご覧いただきありがとうございました
工事を行う上で、騒音・振動は、どうしても発生してしまうものです
しかし、同時に、迷惑を掛けているということも現場側は理解しています
我慢できない場合は、苦情を遠慮なく言いましょう
我慢の目安や、対応してもらえた内容を聞くと、安心する部分も出てくるでしょう
私自身も、建築に携わるものとしても、実務で現場対応する際には、少しでもご迷惑をおかけしないように努力しておりますので、ご理解・ご協力をお願いいたします
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