マンションの騒音問題でお困りの方へ
マンションで生活していると、様々な騒音が気になります
- 上の階で椅子をひく音
- 上の階でこどもが走る音
- 隣の部屋からのテレビやステレオの音
- 道路を走る車の音
これらの騒音をなんとかしたい!と考えたとき、あとからでも対応できる騒音と、対応できない騒音があります
この記事では、そんな騒音に悩まされないために、物件購入時にチェックしておくべき具体的な数値と、あとからでもできる改善策をお伝えします

防音とは?
防音とは
まず、はじめに
と、この記事では定義します
吸音とは
吸音とは、文字どおり「音を吸収すること」であり、音を吸収することで、室内への反響を抑え、また、外部に音が漏れるのを防ぐこともできます
なお、吸音について、もっと知りたいかたは、以下の記事をご覧ください
(オフィスの記事ですが、住宅にも共通する部分が多くあります)
遮音とは
遮音とは、空気を通じて伝達される音波を遮断し、「音を遮ること」を言います
マンションでの騒音は、この遮音がうまくできていないために起こる場合がほとんどです
防音性の高いマンションの選び方
建築構造による防音性の違い
建築構造により、防音性を比較すると
木造 < 鉄骨造 < 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート
となり、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリートが最も防音性があります
なお、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリートの防音性は変わらないため、以降はまとめて鉄筋コンクリート造と呼びます
しかし、同じ鉄筋コンクリート造でも、防音性に大きく差が出る部分があります。以降、各部位ごとにチェックすべきポイントをご紹介します
壁の防音性を判断するポイント
鉄筋コンクリートの壁は18cm以上か
鉄筋コンクリートの壁の場合は、壁が厚いほど遮音性が高くなります
鉄筋コンクリート壁の場合は、厚さ18cm以上は欲しいところです
ただし、鉄筋コンクリート造の建物であっても、壁が鉄筋コンクリートだとは限りません
タワーマンションや、複雑な間取りのマンションの住戸間の壁は、LGSと呼ばれる軽量鉄骨の壁の場合もあります。LGS壁の場合は、下記を参考にしてください
LGS(軽量鉄骨)壁の場合は、TLD値(遮音等級)が50以上か
住戸間の壁は、LGS(軽量鉄骨)壁の場合は、単純に壁の厚さでは比較できません
LGSの部材の配置や、吸音材の有無、ボードの種類など、様々な要素で遮音性が決まります
そのため、メーカーでは、壁の仕様に応じて、TLD値という遮音性を表す等級を定めています
TLD値は、値が大きい方が遮音性能が高くなります
鉄筋コンクリートの壁18cmと同等なのが、遮音性能TLD-50となります
壁を叩いてもわからない
たまに、壁を叩いて反響を確認するという方法が書かれている記事もありますが、まずわかりません
そもそも叩くという行為は日常で発生する振動や騒音と関係ない行為ですし、住宅の壁は石膏ボードの場合が多く、あまり強く叩くと、穴が開きます
住戸の内覧の時に壁を叩くのはやめましょう
床の防音性を判断するポイント
上の階からの騒音は2種類
上の階からの騒音は、衝撃を与える質量の大きさにより、大きく2種類あります
- 重量床衝撃音・・・子供が走りまわる、ジャンプする時の音
- 軽量床衝撃音・・・スプーンを落とした時の音や、スリッパが擦れる時の音
と言ったイメージです
それぞれの音で対応方法が違います
- 重量床衝撃音・・・躯体(床)の厚みで音を防ぐ
- 軽量床衝撃音・・・表面材(フローリングなど)で音を防ぐ
それぞれ詳しく見ていきましょう
鉄筋コンクリート造の場合、厚さ18cm以上が目安
重量床衝撃音は、床の厚みで音を防ぎます
コンクリート床の場合は、壁と同様に厚さ18cm以上を目安としましょう。できれば20cm以上あると安心です
ただし、最近ではスラブの中にボイドと呼ばれる空洞があるものもあり、その場合は、一概には言えません
「鉄骨造の床は、鉄骨なの?」と思われるかたもいるかと思いますが、鉄骨造の床は、デッキプレートと呼ばれる波型のプレートの上に、6cm~10cm程度コンクリートがあります
ただ、このコンクリートの厚さは薄いため、防音性については、鉄筋コンクリートより鉄骨造が劣ると言えます
また、重量床衝撃音をLH値という数値で表すことができ、数値が小さい方が遮音性能が高くなります
重量床衝撃音(LH)の遮音性能は、LH-50以下を目安としましょう
床のフローリングの種類はLL45以下が目安
軽量床衝撃音は、床の表面材で音を防ぐ必要があります
今は、多くのマンションがフローリングですので、このフローリングによって音を吸収する必要があります
歩くとふわふわしているようなフローリングは、フローリングの木材の下にクッション材が入っており、この軽量床衝撃音を低減するためのものです
また、20~30年前のマンションでじゅうたんが多いのも、この軽量床衝撃音の低減のためです
軽量床衝撃音は、LL値という数値で表すことができ、数値が小さい方が遮音性能が高くなります
軽量床衝撃音(LL)の遮音性能は、LL-45以下を目安としましょう
二重床となっているか
上階が二重床となっている方が、音は伝わりにくくなります
ただ、二重床とするということは天井高さが低くなるため、水回り以外で二重床としているマンションは、あまりありません
全面二重床のマンションを探すと、極端に選択肢が少なくなりますので注意しましょう
窓サッシでチェックすべきポイント
窓サッシの遮音性能がT-1以上であればGOOD
窓サッシには遮音性能によって、T-1~T-4の基準が設けられています
T-4が最も遮音性能が高く、T-1やT-2が一般的な防音サッシと呼ばれます
T-3やT-4は音楽スタジオのような防音扉になりますので、まず使うことはないでしょう
遮音性能は、T-1以上であれば良いでしょうが、周りの環境次第で等級がなくても問題ありません
実際に窓を開け閉めしてみて音の低減を感じる
内覧の際に、窓を開け閉めしてみて、どれくらい静かになったかを感じてみましょう

ここにきて直感!?
窓の外側の騒音は様々であり、ガラスごとに音を通しやすい周波数もあるため、ここは感覚で判断するがおすすめです
もっと簡単に防音性の高いマンションを確認する方法
住宅性能表示を取得しているかを確認
図面からコンクリートの厚みを判断するなんてできない!というかたもいらっしゃるでしょう
そこで、住宅性能表示制度というものがあります
住宅性能表示制度とは平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」に基づく制度です。
この制度により、誰でもわかりやすく住宅の評価を確認することができるようになりました
住宅性能表示 評価等級の目安
住宅性能表示制度の遮音対策(音環境)の評価項目は4項目あり、目安となる等級は以下のとおりです
- 重量床衝撃音対策 等級2
- 軽量床衝撃音対策 等級2
- 透過損失等級(界壁) 等級1
- 透過損失等級(外壁開口部) 等級2
マンションそれぞれの状況が異なるため、一概には言えませんが、上記の等級以上のものをおすすめします
なお、住宅性能表示制度の評価を取得していても、すべての項目で評価を受けているとは限らず、遮音対策(音環境)の評価を受けていない場合もあります。
後から防音性を高める方法
これまでは、新たに住宅を購入される場合について記載していましたが、現在お住まいのマンションで騒音に悩まれているかたができる改善策についてお話します
なお、近隣工事の騒音については、以下の記事もご覧ください
上や隣の部屋からの騒音
上や隣の部屋からの騒音については、残念ながら改善できる方法はほとんどありません
上の階の騒音が、軽量床衝撃音の場合、元々じゅうたんのマンションを上の階の住民がフローリングに変更しているようであれば、改善を求めることもできるでしょうが、言いにくいですよね
一方、自分の部屋をじゅうたんからフローリングに変更している場合は、こちらの音も想像以上に下の階に伝わっている可能性がありますので、注意しましょう
外部からの騒音
外を走る車の音など、外部からの騒音が原因の場合は、サッシを変えることで改善します
カバー工法で改修
カバー工法とは、現在のサッシの外枠を残したまま、新たなサッシを取り付ける方法を言います
遮音性の高いサッシに変更することで、騒音を改善することができます
ただし、マンションの場合は、サッシは共用部となるため、できない場合が多いでしょう。
二重サッシを追加する
戸建て住宅などでよく使われる方法としては、既存のサッシの内側に、もう1枚サッシを追加し、遮音性(及び気密性)を上げる方法です
マンションで二重サッシとする場合、壁との取り合いが難しい場合もありますが、検討してみる価値はあるでしょう
マンションで対応できる数少ない方法のひとつです
工事の相談する場合は、サッシメーカーがおすすめです。以下の記事もご参照ください
ガラスだけを変えるのは要注意
ガラスを複層ガラスにすると、(特定の周波数を除いて)遮音性は上がります
しかし、サッシにはガラスを入れる溝幅が決まっており、複層ガラスなどの分厚いガラスを入れる場合は、サッシとガラスの隙間が少なくなり、開け閉めの際にガラスに衝撃が伝わりやすくなります
また、マンションの管理規約によっては、ガラスも共用部扱いとなり、勝手に変えてはいけない場合もあります。必ず、管理会社に確認の上、施工を行ってください

最後に
最後までご覧いただき、ありがとうございました
騒音問題は、マンションで生活する上で、誰にでも起こりうるトラブルのひとつです
ご自身が悩んでいる騒音の原因と対策を調べていただき、この記事が快適な生活を送れる一助となれば幸いです
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