住宅購入の際に、「マイホームはローンを払い終えれば手元に資産が残る」との考え方をして、住宅購入に踏み切られる方がいらっしゃいます。
一方、特に賃貸派のかたは、「マイホームはローンを払い終える時には、資産性はなく、負債だ」と主張される場合もあります。
どちらの考えが正しいのでしょうか。
実は、この手の話は「資産」、「負債」の言葉の裏に隠れている心理を正確に理解しないと議論できない問題となります。
そこで、本記事では、マイホームが「資産」か「負債」かについて、それぞれを主張する人の心理と、「資産」か「負債」かを考える以上に注意しておくべき点について解説します。
マイホームは「資産」
資産の定義
まず、資産とは何かについて解説します。
会計学上は、
資産とは、会社に帰属し、貨幣を尺度とする評価が可能で、かつ将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値のこと
を言います。
この定義に従うと、一般家庭において「資産」というものはないことになります。
「マイホームは会社が利用するものではないので、資産ではない」と主張する人がいるのであれば、それは正解と言えるでしょう。
ただ、それはただの言葉遊びです。あなたに1億円の現金があっても資産ではありません。なぜなら、あなたは「会社」じゃないからです。
1円でも売れるなら資産
では、資産の定義を一般家庭に置き換えてみましょう。
「会社」を「あなた」に置き換えてみます。すると、
資産とは、あなたに帰属し、貨幣を尺度とする評価が可能で、かつ将来的にあなたに収益をもたらすことが期待される経済的価値のこと
となります。
マイホームは売却すれば、ほとんどの場合で価格がつくわけですので、1円でも売ることができるのであれば、資産となります。
一般家庭では、支出を減らすものも資産
ただし、上記の定義で、「収益をもたらすのか」と疑問に思われたかもしれません。
会社は、利益を追求するものであるのに対し、一般家庭はそうでないために、齟齬が生じているものと考えられます。
そこで、筆者が考える資産の定義は以下の通りです。
資産とは、あなたに帰属し、貨幣を尺度とする評価が可能で、かつ将来的にあなたに利益をもたらすことが期待される経済的価値のこと
「収益」を「利益」に変更しました。
「収益」とは、資産の増加のことを指します。
「利益」とは、「収益」から「費用」を引いた差額のことですので、収益を得ることを目的としていない一般家庭においても、費用を削減できるものは資産であるという考え方が適切であると考えます。
マイホームは負債だという人の心理
賃貸の方が経済的利益があると考えている
では、マイホームは負債だと主張する人は、どのような心理でこの発言をしているのでしょう。
まず第一に考えられるのが、賃貸の方が経済的利益があると考えているということです。
マイホーム購入が良いか、賃貸が良いかは、永遠のテーマと言われていますが、その永遠のテーマで賃貸派の人は、マイホームは負債だという表現を使う場合もあります。
インフルエンサーがマイホーム購入より賃貸を勧める理由4選 | 建築のヒント集 (k-h-labo.com)
間違った定義を基準にしている
先述しましたとおり、「あなた」は「会社」ではないため、マイホームは「資産」とは呼べないかもしれません。
しかし、マイホームを「負債」と呼ぶのは、明らかに無理があります。
「負債」とは、将来返済しなければならない債務のことです。
マイホームは、返済する必要はありませんので、負債ではありません。
『金持ち父さん 貧乏父さん』の「マイホームは負債」に反論
マイホームは負債だという考えは、ロバート・キヨサキ氏の『金持ち父さん 貧乏父さん』でも有名です。
著者は、
ことと定義しており、
- ローンを払い終えるまでの間、自分のものではない
- 固定資産税などの税金や、メンテナンスに費用がかかる
- 家や土地の価値はが下がる可能性がある
- 投資にまわすことのできる資金が減る
ため、マイホームは負債であると主張しています。
ローンを払い終えるまでの間、自分のものではない?
ローンを払い終えるまでの間も、マイホームはあなたのものです。
ローンを払い終えるまでの間、抵当権が設定されているため、ローンの支払いが滞るとマイホームを差し押さえられる可能性があります。
ただし、それは住宅ローンを支払わなかった場合の話です。
抵当権は、所有権ではありません。
著者の主張するローンを払い終えるまでの間、自分のものではないという主張は、「無料で住める家がない」という気持ちの問題を表しているものにすぎず、当然賃貸であっても、無料で住める家はありません。
固定資産税などの税金や、メンテナンスに費用がかかる?
固定資産税などの税金や、メンテナンスに費用がかかるのは、その通りです。
しかし、だから負債であるというのは拡大解釈です。
「負債」とは、「将来返済しなければならない債務のこと」と先述しましたが、それをロバート・キヨサキ氏は、「負債は私のポケットからお金をとっていく」ものと表現を変えています。
このことにより、資産から発生する費用があるだけで、負債と呼べるようになっています。
例えば、著者の定義に基づくと、株の投資信託を所有している場合にも、信託報酬がかかるため、「投資信託も負債」と呼べることになります。
つまり、定義が間違っているのです。資産は資産、費用は費用です。
固定資産税などの税金や、メンテナンスに費用がかかるのであれば、それは費用として考えるもので、資産という定義を打ち消すものではありません。
そして、固定資産税などの税金やメンテナンスの費用は、賃貸住宅であっても家賃という形で支払っています。
家や土地の価値はが下がる可能性がある?
家や土地の価値が下がる可能性があるのも、その通りです。
しかし、これもだから負債だという説明にはなりません。
株価が下がった株は、負債でしょうか。いいえ、資産です。
投資にまわすことのできる資金が減る?
最後に、投資にまわすことのできる資金が減るかどうかは、資産配分の問題です。
マイホームの購入金額を、全額ローンを借りれば、投資にまわすことのできる資産は減りません。
著者は賃貸と比較して、投資にまわすことのできる資金が減ると主張していますが、賃貸の家賃とローンの返済額のどちらが高いかはケースバイケースです。
仮にローンの返済額の方が安い場合は、借金というレバレッジを効かせて投資することもできるわけですので、一概に投資にまわすことのできる資金が減るとは言い切れません。
その人の資産配分によっては、投資にまわすことのできる資金が減る可能性もあることを示しているにすぎません。
マイホームは資産だが、必ず購入価格以上の資産性があるわけではない
資産と資産性の違い
ここまで、マイホームは「資産」であると解説してきましたが、決して全員がマイホームを購入すべきだと主張するつもりはありません。
よく「資産性の高いマンション」などと表現されることがありますが、この「資産性」という言葉には明確な定義はありません。
「資産」に「性」がついているため、「資産になる性質のもの」と捉えることもできますが、この言葉が使われている状況から推測し、以下のように定義します。
資産性とは、他者と比較して高い経済的価値を持つ性質の資産であること
戸建て住宅よりマンションの方が、値下がりしにくいのであれば、「資産性が高い」と言えるでしょう。
マイホームの資産性は低いものも多い
残念ながら、マイホームは資産性の低いものも多くあります。
購入価格以上で売却できるマイホームは、ほとんどありません。
しかし、お話してきましたとおり、比較対象は他の住宅であり、所有中や売却時に収益を生むかどうかではありません。
ほとんどの人にとっては、住宅に関する支出が少ない方が望ましいことが、正解となるでしょう。
不動産投資家は知っている!購入vs賃貸どちらがお得?費用徹底比較 | 建築のヒント集 (k-h-labo.com)
最後に
最後までご覧いただきありがとうございました。
本日は、マイホームが「資産」か「負債」かについて、筆者の考えを述べてきました。
言葉の定義については、色々な考え方がありますが、「資産」か「負債」かの言葉に惑わされず、ご自身で納得のいく選択をしていただければと思います。
そして、納得のいく選択のためには、金額面だけでなく、感情面もとても重要です。
購入か賃貸を迷われているかたは、以下の記事もご参照いただけますと幸いです。
本日もありがとうございました!
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